新年あけましておめでとうございます
2020年は60年に一度の庚子(かのえね)の年で全てが最初に戻りリセットされる年回りなのだとか。オリンピックイヤーで世の中は浮き足立っていますがそんな時は尚更のこと地道に進みたいと思います。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
今年はESG/SDGsに注目しています
昨年11月には抗議活動の真っ只中の香港で、TBLI主催のESG投資家イベントに”ESG Integration in Japan” のセッションの司会として参加してきました。このカンファレンスには欧米アジアの投資家やファミリー・オフィス、ESGメディア関係者など250名が参加しました。(写真はカンファレンス参加者が歓談する様子)主催者のRobert RubinsteinさんはESGに携わって25年以上。まだESGという言葉もない時期から多くの企業や投資家に啓蒙活動をしてきました。”ESG投資 = farmer approach(農民的アプローチ), Equity投資 = hunter approach(ハンター的アプローチ)”と説明され、ESG投資とは長期にわたって本質的な利益を追求するものであるという投資哲学を持つESG業界のパイオニア的存在です。
カンファレンスに参加してまず感じたことは、ESG/SDGsは発展途上中の試みであり絶対的な正解はない。したがって企業や個人は気負わずそれぞれのできる形で社会課題を解決していけば良いのでは、ということでした。
もう1つは、特に欧州では投資判断のプロセスの中にデフォルトでESGスクリーニングが組み込まれているということ。インテグレーションの方法には投資家それぞれの方法論があり絶対的なものはなく、試行錯誤を経て現在進行形でデータを積んでいる進化の過程にあるということを学びました。
日本についての情報が全く足りていないと実感させられるほど、欧州のESG投資家からは基本的な質問ばかりでした
私たちのセッションに参加した主に欧州の投資家からは、「日本独自のESGスクリーニング項目はあるか、そしてそれはなぜ必要か」、「企業のガバナンス体制は?」や「労働人口減少問題へのアプローチは?」、「労働者の残業や離職率はどうなっている?」などについて数多くの質問が寄せられました。どれも驚くほど基本的な質問ばかりです。まがりなりにも世界第3位の経済大国の日本について、ここまで周知されていないとは正直思っていませんでした。スゥエーデンのESGのデジタルメディア Nordic Sustainable Investmentsの記事 Where is the “G” of Japan? の中でセッションの内容を取り上げています。この記事の中でも「日本独特の文化や言葉の壁で日本企業とグローバル投資家とのコミュニケーションが難しい」と述べられています。私たちの普段接している日本株式の専門家の投資家というのはグローバル投資家の中のほんの一握りのマイナーな存在です(日本株式の時価総額は世界株式約3.2兆ドルのうちの8.5%。2018年8月時点)
これからは日本専門以外の投資家にもわかりやすく英語での情報発信していくことが必須だと感じました。企業のウェブサイトでは最初から完璧を目指さず、最基本的なESG項目から情報を明文化することがとても重要だと感じました。
世界の運用資産の3割に当たる約3,400兆円(31兆ドル)を占めるESGマネー
気になるのは果たしてESG投資は本当に有効なのか(アルファを取れるのか)という疑問でした。私が司会を担当したパネルディスカッションでは、あるESGファンドの運用益は4年目で獲得できたというデータ(累計ベース)が示されました。したがって、各国の取引所が上場企業にESG関連の情報開示を義務付けることでESGマネーの取込みを狙うのはもっともだと言えます。(出所:日本経済新聞2019/11/12)
ESG/SDGsを通じて社会課題の解決に取り組む日本企業の応援サイトSustainable-Insight Japan.comをスタートしました
年初に、仲間と一緒にESG推進企業の応援サイトをスタートしました。会員登録していただけると専門家の記事などを読めます。
このサイトでは日本企業とグローバルのESG投資家がお互いを発見できる場所になればと思います。ESG専門家から日本企業に向けたメッセージ、企業へのアンケート、企業のESGスコアリング、トップインタビューシリーズ、関連記事などのコンテンツを提供していきます。(一部有料)
まずはプレゼンテーション資料などの通常のIRの資料の中に、ESG項目を”ふんわりと”インテグレーションしていくことも今までとは違う株主を見つけるチャンスにつながるのではないでしょうか。ESGとは何かを知りたくなったらサイトを訪ねてみてください。