はじめに
ニューヨークの証券会社に勤務して上場企業と投資家のミーティングをセットする役目を仕事として引き受けたのが1997年頃だったか、それから20年の歳月が流れました。さらに事実上の引退から5年の月日が流れて、今またIR関連業務のアドバイサーに復帰することになりました。
このブログでは私が実際に体験した海外機関投資家(主に米国)と上場会社との間で行われた様々な場面を思い浮かべながら私自身のIRに拘る気持ちを伝えて行きたい、と思います。
IR とは
IR とは投資家との間で最も効果的な相互コミュニケーションを実現するための経営者による責務です。したがって最終目標とは企業の証券が公正な価値評価を受けることに尽きます。
IR= investor relations を「投資家向け広報」と日本経済新聞社が訳したという所から日本の上場企業のIR活動は始まっています。従ってほとんどの上場企業のIR部は広報部と財務部から其々配属された社員によって構成され、どちらかの部長が兼務する形でスタートしています。
忘れられないミーティング
私がIRに関わり始めた当初の日本企業、特に製造業の多くは「物創り」の優秀な会社である、といった広報型のプレゼンテーションが多かったのです。投資家から「社長、素晴らしい製品を創っているから株を買え、っていうのは違いますよ。お創りになった優秀な商品で社長としてはどのくらいの利益を、どうやって上げようとしているのか。そのお話をされるのが我々投資家と会って話すべき事なんじゃないですか」
こういう話が散見されていた時代でしたね。そんな個別ミーティングを終えて、お怒りも露わにお顔を真っ赤にして引き上げる社長を横に見て、IR担当者が駆け寄って来て私に言います。「これで良かったんです。こういう機会を経て、社長も我が社も変わっていけるんですから」
IRミーティングは会社トップによる投資家への広報活動かと思いきや、海外投資家との出会うことで自らの経営姿勢を問う機会になる、そんなシーンの一例です。
(続く)